■片桐大智ってダレ?
株式会社セガ AM R&D2 所属。『バーチャファイター5』ゲームディレクター。
バーチャファイターシリーズや『デイトナUSA』、『アウトトリガー』等色々なジャンルのゲーム調整を担当。
ゲームはジャンルを問わずどれも好きです。 最近は『バーチャファイター5』や海外のとあるMMOをプレイしています。
■D.K.のVF5FS通信:第73回■

こんにちは。D.K.です。

『バーチャファイター5 ファイナルショーダウン(VF5FS)』が、ついにリリースされましたが、みなさんすでにプレイしていただいているでしょうか。

今回はその『VF5FS』で導入されているゲームシステムのお話をさせて頂きたいと思います。

お題はこちらです。

『VF5FS』のコンボダメージがシンプルな計算になったっていうけど、どこがどう変わったの?

『VF5R』までと『VF5FS』とでは、コンボダメージに関する計算式をシンプルに変えました。
このことは、このコラムの第69回でもお伝えした通りです。
それではなぜ変えたのか? その理由を挙げてみましょう。

【『VF5FS』でコンボダメージの計算式を変えた理由】
理由1:『VF5R』では、多様な状況で補正がかかっており、相手の状態を正しく認識しないとコンボダメージが予想しづらい状態だったので、これをシンプルに改善し、わかりやすくするため。
理由2:『VF5R』の計算式では、早めにコンボ補正がかかってしまうため、見直しを図りたかったため。
理由3:『VF5R』よりも、壁コンボと通常コンボの差を小さくしたかったため。

以上3点が主な理由です。

補正のフローを『VF5R』と『VF5FS』に分けて、下にまとめてみました。
仕様の部分なのでそれほど文章におもしろ味がなくて申し訳ありませんが、興味のある方は多いと思いますのでご覧ください。

※注意※
『ダメージ×0.8^(同じ技の数)』と書かれている式の『^』はべき乗を表します。
例えば同じ技の数が3の場合『ダメージ×0.83 』という意味です。

見ていただければわかるかと思いますが、上から順に参照して、状況に当てはまるものがあれば選択されていき、最終的にすべての条件を参照した後で、ダメージが決定するという流れです。

例としてジャッキーのコンボ(4K+G ⇒ P ⇒ 6PPK)で見てみましょう。

『VF5R』の場合、「コンボ数2」のところで、相手のダウン状態が地上かどうかを把握していないとダメージを正しく求めることができなくなっています(“相手の状態による補正値”が影響するため)。
それに対して、『VF5FS』では本来の技ダメージの、一律0.7倍で統一されています。計算する回数はそれほど変わりませんが、相手の状況を考慮する必要がなく、シンプルにダメージ量が求められるかと思います。

【補足】

◎【空中コンボによる補正値】内の式について

■『VF5R』の場合

上の式をひとことで言うと、空中コンボでは、4発目から空中コンボ補正がきつくなりますよ!という事です。
ダメージ30の技を例にしてダメージを各コンボ数で計算してみましょう。

2発目:30×0.8=24
3発目:30×0.8=24
4発目:(30×0.8)×0.8^1=19
5発目:(30×0.8)×0.8^2=15
6発目:(30×0.8)×0.8^3=12
7発目:(30×0.8)×0.8^4=9

という感じになります。空中で技がヒットしているのでダメージが0.8倍され、0.8倍されたダメージが更にコンボ数による補正を受けます。

■『VF5FS』の場合

空中コンボ5発目から緩やかにコンボ補正がかかるような調整になっています。
ダメージ30の技を例に計算してみると、こんな感じになります。

2発目:30×0.7=21
3発目:30×0.7=21
4発目:30×0.7=21
5発目:30×0.7=21
6発目:30×0.6=18
7発目:30×0.5=15

空中コンボ3発目までは『VF5R』の計算式の方がダメージが高くなりますが、コンボが長くなるにつれて『VF5FS』の方がダメージが高くなります。足位置を見つつ少しでもたくさんのコンボを入れることができれば、それがダメージアップに繋がりやすくなるように調整されたことが伝わるかと思います。
もちろん、1発の攻撃力が高い技を当てて大ダメージを取る事もできますので、いろいろと試してみてくださいね。

◎【相手の状態による補正値】内の式について

■『VF5FS』の場合

とあります。これは、壁貼り付け以降に当てた技すべてが対象となっています。

■ 『VF5R』の場合

『VF5R』では、『壁に貼り付け中』にヒットした技、つまり張り付き中にヒットした1発の技のみに補正がかかっていました。

『VF5R』では、張り付け中とそれ以外とで倍率が変化してわかり辛いので、『VF5FS』では『壁貼り付け後』(一度壁に張り付いた以降、すべての攻撃が対象)は、ダメージが一律0.8倍になるように調整しました。

「壁コンボとの差が少なくするために、通常のコンボダメージが上がったのであれば、コンボが強すぎるゲームバランスになっているのでは?」という思われるかもしれません。実際、『VF5FS』のコンボダメージ量は、『VF5R』と比較して、1割程度増えています。同じコンボを決めたときでも、今まで80だったダメージが、90になっている、という具合です。

そしてまた『VF5FS』では、初期体力を『VF』シリーズ伝統の200から220に増やしました。体力が1割上がっているので、通常コンボは変わらないまま(コンボ数が多ければ実際には増えるケースもあります)、壁コンボのダメージだけが1割減るというバランスが作られていることになります。

「体力が220って、ハンパな数字で美しくない! ちゃんと考えてるの?」という声もあるかもしれません。
技のダメージすべてを調整してしまうことも考え、サンプルも作成してみたのですが、今まで覚えたことがすべて変わってしまう違和感と、個別の技毎にダメージ量が変わってしまうことが、プレイヤーに負担をかけてしまうのではと考え、今回の仕様に落ち着きました。

さて、「ここまで読んだけど結局コンボができないと勝てないの?」と思っている方へ、もう少しお話させてください。

『VF5FS』では、ダメージの小さいコンボなら4回、そこそこの安定コンボなら3 回、大技でカウンターヒットさせて、さらに相手が軽量級で「最大ダメージに近 い!」的なコンボあれば2回きめることで、K.O.出来るように調整しています。 (ただし、これはあくまで目安で、キャラクターの違いや、壁を使うなどの限定 条件でも一概には言えませんが……)。

元来はそうした考えから出発していますので、技を少しずつ当てていくだけでは、なかなか状況を逆転することが難しいと感じるのも無理はありません。
ただ、『VF5FS』では相手の行動を読んで技を当てることで、カウンターヒットを狙えるシチュエーションが増えていますし、カウンター時のダメージも『VF5R』より増えています。立ち回りだけで勝つ事も想定して調整していますので、これまでとは違ったプレイスタイルや、思想を持ったプレイヤーが頭角を現すのかもしれません。

いかがでしょうか? 
『VF5FS』でのコンボの補正について、導入した仕組みとその意図を説明してみました。 少し書こうとしたつもりが、かなりの文章量になってしまいました。私の説明が下手なこともあるかと思いますが、お付き合いありがとうございます。
今回に限らず、「もっとこういうところを説明してほしい!」などのご要望がありましたら、お便りをください。

最後になりましたが、今回もまたムービーを作成しましたのでご覧ください。
今回取り上げたコンボ補正について、それとなく伝わるようにもなっていますので、意識しながら観ていただけるとおもしろいと思いますよ。



それではまたお会いしましょう! オーイェー!



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