■片桐大智ってダレ?
株式会社セガ AM R&D2 所属。『バーチャファイター5』ゲームディレクター。
バーチャファイターシリーズや『デイトナUSA』、『アウトトリガー』等色々なジャンルのゲーム調整を担当。
ゲームはジャンルを問わずどれも好きです。 最近は『バーチャファイター5』や海外のとあるMMOをプレイしています。
■D.K.のVF5通信:第43回■

こんにちは、D.K.です。

『VF5R バージョンB』がリリースされてから、しばらく経ちました。
みなさん楽しんでプレイしていただいているでしょうか?

前回このコラムでは、
<D.K.の手前味噌ながらバージョンBのココがスゴイ!>
と題して、「こまけーことはいいんだよ! 簡単にバージョンBの変更点を説明するぞ!」という感じで変更点をお伝えしましたので、今回は逆に
<細かすぎて伝わらない、バージョンBの変更点>
を書いてみたいと思います。

深くプレイしていただいているであろうプレイヤーさんからは、
「技のフレーム変更よりも、技の追尾方法が変わったことのほうが重要だ!」
という話を聞きますし、実際に独自に調査してくれているようでした。
開発に来てほしいと思うような、高いレベルの話題が当たり前のようにされているプレイヤーのみなさんには本当に頭が下がります。今回は、その技の追尾方法について、どのように変化したかを説明していきましょう。

『VF5R バージョンB』以前のバージョンでは、自分の技を出したときに相手の位置を認識して、その位置を目標点として技を出していきました。 『VF5R バージョンB』では、認識する位置は同じなのですが、技の発生の半分のフレームまで目標点を更新し続けます(ただし、ディフェンシブムーブ成功時など、特定のシチュエーションは除きます)。

止まっている相手に技を出したときの挙動は、新旧のバージョンで変わりはありません。
図にすると、以下のようになります。



お互いが同時に攻撃を出し合った場合も同様です。双方が直線的に動いている場合は、互いの技がヒットします。



ただし、『バーチャファイター』はすべて3Dで作られているので、お互いが直線で動く技ばかりではありません。
相手に対して、側面から回りこむように、横に移動して攻撃をする技も多数あるのです (アキラの跳山崩捶(←→P+K)など、一見すると、横に回りこんでいないような攻撃も、じつは横に移動していたりするのです)。

そのことを図で示すと、以下のようになります。



さらに、片方のキャラクターが止まっていれば問題ありませんが、両方が動いている場合、以下のようなケースが発生してしまいます。



これは、技が出た瞬間に攻撃目標を決定し、その目標を目指して移動するために起こることで、相手の技や攻撃するシチュエーションをよく見た上で攻撃してもらいたい、という意図によって、このような仕様になっていました。

お互いの技が空を切るということは実際ありえましたし、そこを攻防のなかでうまく利用できるように調整していました。しかしこの点については、ストレスに感じるプレイヤーが思った以上に多かったため、これを改善するべく、『VF5R バージョンB』では変更を加えました。



もちろんこれだけですべてが解決するわけではないので、技のコリジョン(アタリ判定)でも様々な調整を行っています。 いくつか行った調整のうち、ひとつを取り上げましょう。
以前のバージョンでは、裸体をイメージした範囲をアタリ判定として持たせていましたが、 『VF5R バージョンB』では、裸体が服を着た状態をイメージしたアタリ判定に変更しました。これを図解すると、以下のようになります(※あくまでイメージです。コスチュームやアイテムによってアタリ判定が変化することはありません)。

図1 図2 図3

図1:画面に表示されるアキラです。
図2:以前のバージョンでのアタリ判定イメージです。
図3:『VF5R バージョンB』でのアタリ判定イメージです。

手の先、足の先は裸体をイメージしたアタリ判定にしています。理由はリーチが著しく変わってしまい、当たっていないのに当たっているように感じることが増えるためです。勘のいい方は「じゃあ肘や膝のリーチが伸びているんじゃない?」と思うでしょうが、そのあたりはちゃんと別の方法で調整しています。

技のデータを変更していない箇所について、みなさんが「この技が当たりやすくなった!」、「リーチが伸びた!」と感じる部分は、この変更によるところが大きいですね。

いかがでしょうか? 「ちょっとわかってきたぜ!」とか、「ぜんぜん意味がわからない!」 とか、あるいは「もっともっと詳しく書いてほしいぜ!」などなど、感想はさまざまでしょうが、「もっと詳しく書いて!」っていう人が多ければこのあたりの解説はまたやってみたいなと思います。

個人的にはもっともっと深く突っ込んでお話したいところですが、すべてを話してしまうと怖い大人の人に怒られてしまいますので、このへんにしておきましょうか。

それではまたお会いしましょう!
オーイェー!



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